歯科衛生士 8月
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22 歯科衛生士 Vol. 36 No. 8/2012現在わが国でフッ化物歯面塗布剤として販売されている5つの製剤1)は、配合フッ化物がフッ化ナトリウム(NaF)で濃度が9,000ppm(F)であるという点は共通しています。臨床でどのフッ化物塗布剤を選択するかという際にはいくつか考慮すべき点がありますが、その中でもっとも重要なことは「酸性か? 中性か?」です。酸性のフッ化物塗布剤はAPF(Acidulated Phosphate Fluoride:酸性リン酸フッ化物溶液)と呼ばれます。これはフッ化物応用時に酸性溶液と併用した場合に歯面への浸透率が良好だったという基礎実験結果をもとに開発されたものです2)。しかしながらフッ化物塗布剤が酸性か中性かによるう蝕予防効果の差は、実は特に認められていません3)。しかも近年、APFがチタン合金に対する腐食作用とポーセレンに対する劣化作用をもっていることがわかってきました4)。チタン合金は、近年、歯科臨床の場でインプラントや矯正ワイヤーの材料として普及してきています。またポーセレンはメタルボンド冠など古くから歯科臨床の場で用いられています。ですから、これらを有する患者さんへのAPF使用は避けるべきです4)。このような患者さんの来院はけっして珍しくはないのですから、フッ化物歯面塗布を行う場合には、使用すべき塗布剤かどうかを、われわれ歯科医療者がまず確認しておく必要があります。フッ化物塗布剤にも、“選び方”“選ぶ理由”がある!安藤 雄一口腔内状況や患者さんの好み、使用効率を考えて選ぼう酸性か中性かは、患者さんの口の状況に応じて選ぼうゼリー状フッ化物塗布剤液状フッ化物塗布剤泡状フッ化物塗布剤利点 ①塗布しやすい。②�歯面への停滞性がよく、乾燥しないので繰り返し塗布する必要がない。③�塗布状況が明瞭で視認しやすい。④�トレーを用いることにより、一度に上下顎歯列の塗布ができ時間が短縮できる。利点 ①�塗布後に溶液をふき取る操作を必要としない。利点 ①歯間部に入りやすい。②歯面への停滞性がよい。③使用量が少なくてすむ。④�トレーを用いることにより、一度に上下顎歯列の塗布ができ時間が短縮できる。欠点 ①歯面に停滞するため、塗布後フッ化物をふき取る操作が必要。②溶液に比べやや高価である。欠点 ①乾燥したら再度塗布して湿潤状態を保たなければならない。②�現在は溶液に適したトレーがない。欠点 ①塗布後、口腔内にある余剰フッ化物をふき取る操作が必要。表1各種塗布剤の使い勝手一覧※ゼリー状と液状については参考文献₄より引用改変、泡状については加藤久子氏による使い勝手実感
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